あちこちの地頭達が所領での出来事を、京都から或る時は強い縁故を利用して、或る時は手紙をよこし、(横取りや占領され)嘆いてくる人々が多くおります。それなのでその審議をしました。ところで、検非違使大江公朝は去年の冬から鎌倉におりますが、近いうちに京都へ帰ると言うので、その大江公朝の思惑を了解され、訴えてきている数々の内容を(後白河法皇に)お知らせするために、箇条書きを一枚の紙に書き出し、公朝に渡すようにしなさいとのことです。実はその公朝が、鎌倉へ来るついでに数々の手紙を持ってきたのであります。その文書に書かれているのは、
宝殿 越後国奥山庄の地頭が何か不当な事をした。
修理大夫家 尾張国島津社 板垣三郎兼信が年貢を弁済していないとのこと。
右衛門佐御局 信濃国四宮庄 地頭が年貢と領家の取り分の双方を納付していないこと。
大宮御局 伊勢国志礼石御厨字輪田 右馬允が不当な行為のこと。
賀茂神社の神主 大夫判官を探しています。高雄文覚上人が賀茂神社への天皇家の文書を無視して賀茂神社の領地を横取りした事
新中将殿 伊賀国若林御園の内の七町九反を横取りした事。佐々木太郎定綱の分五町四反。三浦平六兵衛尉義村の分一町五反。阿保別府一町。
大江公朝 吉備津宮領西野田保の地頭職の貞光の事は、今までの例の通りに、被告人の言い訳を退けて、元の通りに間違いなく公朝の領地とすること。
以上の事柄は、きちんと判決を出すべきであろうけれども、しかしこのような訴訟は、後白河院から命じられたことなら、何もおいても判断いたしますが、私の縁故を頼って、私に伝えてきたものは決済すべきではないので、善悪については簡単に判断材料にしてはいけません。縁故で判断すれば、世間の人達はさぞかし偏った判断だと思うことでしょう。そこで、この度は判断いたしません。
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